リフトオフ

リフトオフはディスクリート部品を はんだ付けした際に、スルーホールのフィレット近傍で起こる剥離現象の事です。

単にリフトオフというと、大きく分けて2つの現象を含んでいます。(厳密には3種)

 1) フィレット剥離 (ランド-はんだフィレット間の剥離現象)

 2) ランド剥離   (ランド-基材間の剥離現象)

この他、非常に稀なケースですが、3番目として「基板内層剥離」を起こす事も確認されていますが、はんだ付け時の熱影響による発生との区別が困難な為、注意が必要です。

 

上記1)のフィレット剥離の場合は、“接合部”である,はんだと合金層との界面での剥離である為、①基板設計、②製造条件の両面での改善が必要です。一般的には信頼性上“大きな影響は無い”とされていますが、これは程度によります。接合面積を阻害する現象ですので、無い方が良い事は言うまでもありません。

上記2)のランド剥離の場合は、はんだ接合部の強度が基材よりも強かった事を示しますので、上記①、②の他、③基板製造(基板メーカー)での改善も必要となります。

一般的には、オーバーレジスト(ランド上へレジストを被せる)等の物理的な対策を施す事で、発生の回避を行っている事が多い。

 

■リフトオフの特徴

  1. 両面(多層含む)スルーホール基板で発生する
    片面基板では、殆ど発生しません。
  2. はんだ合金や部品端子めっきに、Bi、Pb等の異種金属元素を含む場合に顕著
    はんだ凝固時の固・液共存領域で、溶融はんだの凝固点が急激に下がる為。
  3. はんだ凝固時に凝固収縮が大きくなる部品面側での発生が顕著
    部品毎に傾向あり。部品の素材である、樹脂(特にPA66ナイロン)やセラミック等、放熱性が高いもので顕著。
  4. 上記2の金属を含む場合は部品面・はんだ面の両面で発生する場合が多い
    上記2の傾向が部品面・はんだ面の両面で起こる。しかし上記3の影響もある為、部品面側の方が多く発生する傾向がある。

リフトオフ発生要因

①ミクロ偏析

  1. 固液共存領域の広い合金(非共晶合金組成にある鉛フリーはんだ:Sn3.0Ag0.5Cu等)では、溶融はんだの冷却が始まると、先ず液体中に凝固の核(上述のはんだ組成の場合Sn)が多数発生し、樹状に固体が成長する。※デンドライト成長
  2. この際、溶質元素であるBiやPbが液相中に排出される。
  3. 残る溶融はんだ中のBi、Pb量が増加する事で、溶融はんだの融点が急激に下がる。

②凝固収縮

  1. Cuランドには基板内部からの熱が伝わる為、そこに接するフィレット部は凝固しにくい。
  2. 熱伝導の方向(下図)より、最終的に凝固する箇所はフィレット先端となる。※界面に液相が残リ易くなる
  3. 界面が凝固しない状態で、はんだの凝固収縮や基板の(基板もはんだ付け中は加熱されている為膨張している)垂直方向への熱収縮が生じる。
  4. フィレット先端部でリフトオフ(フィレット剥離)が発生する。

ちなみにランド剥離は、凝固中に蓄積された応力が緩和されずに残留し、ランドと基板内部に集中した為に生じる。

程度の大きい・外観で判定できないリフトオフ